女性を悩ますSTD(性感染症)の不快な症状

女性の婦人科医

性器クラミジア感染症
「細胞寄生体」であるクラミジアは、生きた細胞の中でしか増殖することができないという点でウイルスに似ています。人間では、STD(性感染症)を引き起こす「クラミジア・トラコマチス(通称:性器クラミジア)」が有名です。男性では尿道炎、女性では子宮期頸管炎などを引き起こします。

淋菌感染症(淋病)
淋病の原因である淋菌は、グラム陰性の球菌であるナイセリア属菌です。STDの代表的な病因菌である淋菌に感染すると、男性では排尿時の激しい痛み、尿道から膿汁が出るなどの自覚症状が現れますが、女性の場合は初期は無症状のことが多いので、感染が拡大しやすいという特徴があります。

出産時に新生児が産道感染すると、淋菌性結膜炎という重い病気になることがあります。妊娠している、あるいはその予定がある人は、予め検査を受けておきましょう。

性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスによって起こる病気で、セックスで感染した後、初感染の場合は、まず2~7日後に発熱、倦怠感などが、そして3~4日すると、米粒大の赤い水疱が外陰部や膣にできます。痛みのために歩行や排尿に支障をきたすこともあります。

性器ヘルペスの治療には、抗ヘルペスウイルス剤(アシクロビル)の軟膏、点滴、あるいは薬を服用します。妊娠中に感染すると、流産や早産のリスクがあります。

抗ヘルペスウイルス剤は不快な症状を治すことができても、ウイルス自体を駆除することはできません。単純ヘルペスウイルスはその後も神経節に潜んでおり、体の抵抗力の低下がすると、皮膚表面に移動して再発します。

梅毒
梅毒は、STDとしての歴史が古く中性の著名な哲学者や作曲家も梅毒が原因で亡くなったとされています。梅毒に罹り、重症化すると中枢神経が侵されて、死亡することもあります。特効薬であるペニシリンの開発で患者数は激減しましたが、この数年は日本でも再び感染者が増えており、2015年は過去最高となる2,600人超の感染者が報告されています。

梅毒の原因菌は梅毒トレポネーマという螺旋状の形をした菌です。ちなみにトレポネーマとは”回転している糸”を意味しています。妊婦が梅毒トレポネーマに感染していると胎盤で菌が増殖し、子供に障害が残ったり、死産になることがあります(先天梅毒)。したがって、妊娠の予定のある女性、そのパートナーは梅毒の検査を受けておくことが大切です。

梅毒トレポネーマは熱や乾燥に弱く、人工的に培養することができません。検査には代わりとして、牛由来の脂質に対する抗体を検出する方法が採用されています。これをワッセルマン反応といいます。治療にはペニシリンが第1選択薬として使用されます。

カンジダ膣炎
真菌(カビの仲間)のカンジダ・アルビカンスが膣に繁殖して起こるSTD(性感染症)です。この菌は健康な人でも、皮膚や粘膜、腸管内に潜んでおり、セックスだけが感染ルートというわけではありません。

健康で免疫が働いているときは菌が炎症を起こすことはありませんが、病気や睡眠不足などで免疫が低下すると発症して、膣内や外陰部の強いかゆみ、カッテージチーズ状の白いオリモノが増える、甘酸っぱい臭いのおりものが出るなどの症状が現れます。

治療は抗真菌剤(エンペシド、フロリード、バリナスチン、オキナゾール)の膣錠や軟膏、クリームを10日ほど使用することで、症状は治まります。しかし、治った後も免疫力が低下すると何度も再発するのが、この病気の煩わしいところです。

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
一般的には「エイズウイルス」と呼んだ方が馴染みがあるかもしれません。HIVが発見された当初は、ヒトに感染して免疫機能を破壊することで、さまざまな感染症や悪性腫瘍を発症し、結果として死に至らしめる(エイズ:後天性免疫不全症候群)という恐ろしいウイルスでした。

実際、ソープランドをはじめとする風俗で性病に感染した体験談では、最も恐ろしい「事故」としてHIVが紹介されています。HIVの生物学的・病理学的な解析が進んだ現在では、治療薬の開発が進んでおり、早期に感染を発見して抗ウイルス療法を行えば、エイズの発症を抑えながら社会生活を送ることが可能となっています。

しかし、新薬が登場すると必ず耐性ウイルスが出現するため、次の新薬が必要といういたちごっこが今後も繰り返されることが予測されます。また一度感染したHIVを完全に排除することはできず、増殖を抑えることで失われた免疫力を回復させるまでの治療ですので、多くの治療薬を一生涯飲み続ける必要があるため、心身の負担や治療費の負担は決して小さくありません。

日本国内におけるHIVの新規感染報告者は増加傾向にやや陰りが見られてきているものの、先進国の中では唯一、感染者が増えています。抗ウイルス療法の進歩で、感染抑制が定着した一方で、感染者の低年齢化が問題となっています。感染ルートの大半は同性間・異性間の性的接触です。

膣トリコモナス
原虫(単細胞で生育する真核生物)であるトリコモナスによる感染症で、セックスで感染するSTDに位置づけられています。女性では尿道や膣に感染して、尿道炎や膣炎を引き起こします。陰部の激しいかゆみ、悪臭を伴う泡の混じったオリモノが特徴です。

萎縮性膣炎
卵巣の働きが低下して、エストロゲン(卵胞ホルモン)が減少する更年期に多い病気です。かゆみはあまりありませんが、膣の乾燥、悪臭、黄色っぽいオリモノが増えるほか、膣の潤いが失われ伸縮性が悪くなるため、膣内がピリピリしたり、セックスの際に痛みを感じます。症状が重い場合、自転車に乗ったり、トイレットペーパーで擦れたりする程度でも出血します。

治療は、炎症に対しては消炎剤、細菌感染には抗生物質が処方されます。ホルモンが入った膣坐薬を膣内に挿入したり、錠剤を服用することもあります。出血は子宮体がんの初期症状などの可能性もあるため、膣炎と自己判断しないで必ず婦人科を受診しましょう。